税理士法人森田事務所 > 記事一覧 > 相続の対象となる財産・ならない財産とは?その違いを徹底解説
財産には、相続の対象となる財産と、相続の対象にならない財産があることをご存じでしょうか。
相続が発生した際、どの財産が相続の対象になるのか、またどの財産が対象外なのかを理解しておくことは非常に重要です。
本記事では、相続の対象となる財産・ならない財産について、それぞれ詳しく解説します。
相続財産とは、死亡した人(被相続人)が保有していたすべての財産を指し、相続人が引き継ぐことができるものとして民法で定められています。
相続財産は預貯金や不動産など形のあるものに限らず、権利や義務の他に、被相続人が負っていた借金などの債務も含まれます。
また、相続財産は相続人による遺産分割協議によって具体的な分配を決定します。
ただし、民法で規定されている相続財産と、相続税法で規定されている相続税の課税対象となる財産は、必ずしも一致しない点に注意が必要です。
相続の対象となる財産には、大きく分けて2つあります。
プラスの財産とは、預貯金や不動産などの金銭的価値のあるものに加え、借地権、損害賠償請求権など法律上の権利を含み、以下のようなものが挙げられます。
・現金、有価証券
・不動産と不動産上の権利(土地、家屋、借地権、抵当権など)
・動産(自動車、家具、宝石、骨董品など)
・その他権利(損害賠償請求権、著作権、特許権など)
マイナスの財産とは、借金などの負債に加えて連帯保証人としての地位など、法律上の義務も含まれており、以下のようなものがあります。
・負債(被相続人が残した借金やローンなど)
・未払いの税金(未納の所得税や住民税、固定資産税など)
・保証債務(被相続人が保証人として負っていた債務)
一方、相続の対象とならない財産としては、大きく分けて以下の3つがあります。
一身専属権とは、被相続人だけに認められた権利や義務、地位や資格のことを指し、個人の人格や才能、または個人としての法的地位に深く結びついているため他者に譲渡することができない権利のことを言います。
具体的には、以下のようなものが該当します。
・国家資格
・会社の役員の地位
・公営住宅の使用権
祭祀財産とは、墓地や墓石、仏壇や家系図などを指します。
祭祀財産は必ずしも相続人が相続するものではなく、地域や家庭内の慣習に従って決定した祭祀を主宰する者(祭祀承継者)が引き継ぐため、相続財産には含みません。
民法上、祭祀承継者の決め方には明確な規定がないため、慣習に従って決定するか、被相続人が指定している場合はその人が引き継ぐことになります。
契約や法律に従って支払われるものとして、死亡退職金や生命保険金、遺族年金などがあります。
これらは、被相続人が亡くなることにより支払われるものですが、死亡退職金の場合は被相続人の勤務先から遺族に支払われます。
また、生命保険金も指定された受取人に支払われるため、相続人固有の権利とされ、相続財産とは別に扱われます。
ただし、金額によっては相続税の課税対象となる場合があるため、注意が必要です。
ここまで、相続の対象となる財産・ならない財産について見てきましたが、最後に相続税の課税対象となる財産について解説します。
相続税の課税対象となる財産には、大きく分けて2つあります。
前項で触れたように、契約や法律に従って支払われる死亡退職金や生命保険金は、民法では相続財産ではありませんが、相続税法では被相続人が死亡したことにより得られた財産とみなされます。
このような財産を「みなし相続財産」と呼び、他にも被相続人の勤務先から遺族に渡される香典や弔慰金(ちょういきん)も、一定額を超える場合は相続税の課税対象となる可能性があります。
ただし、死亡退職金と生命保険金については、500万円に法定相続人の数を乗じた金額を限度として非課税枠が設けられており、この非課税限度額を超えなければ税金はかかりません。
相続の対象となる財産・ならない財産を正しく理解することは、相続手続きをスムーズに進める上で非常に重要です。
また、民法では相続の対象ではない財産でも、相続税法では相続税の課税対象となる財産があることで、遺産分割を行う際に影響を及ぼす可能性があります。
相続に関する問題は複雑なため、遺産分割や相続税に関する問題が生じる前に、専門家への相談を検討してみてはいかがでしょうか。